Miscellaneous Notes

経営史や研究に関する雑多なメモを、ブログのような感じで、気が向いたら書いていこうかと計画中

メモ書き程度のものなので、学術的な信頼性が担保されておらず、あくまで宮田個人の意見程度のものと捉えて下さい。

「工事中」が多いのは、気づいたときに書くため。きちんとした主張がみえてきたら、それぞれのトピックについて論文等で発表出来たらよいなと考え中。

「研究者な道」を知る上での参考文献

Elsevier Researcher Academy

谷本寛治(2021)『研究者が知っておきたいアカデミックな世界の作法』中央経済社。


「歴史」「歴史家」を考える上で参考になるウェブ情報

[update history:  Jan. 9, 2022]

日本語訳を下記URLから読むことができます。歴史とは、歴史家とはを考える指針を得られると思います。

https://rhcr.info/aha-statement-on-standards-of-professional-conduct/

[update history:  Apr. 18, 2022]

https://www.msz.co.jp/news/topics/08968/


ビジネスモデルとビジネス・システム

[update history:  Dec. 10, 2021; Jan. 10, 2022]

□ビジネスモデルの代表的研究者であるAmitとZott (2001)では、

「ビジネスモデルとは、事業機会を活かすことを通じて、価値を創造するために

  デザインされた諸処の取引群についての内容・構造・ガバナンスの総体である

  (Amit & Zott, 2001; 入山, 2019)」と定義されている。

□入山(2019)によれば、学術的にビジネスモデルの定義は定まってはおらず、

 各研究者の定義の共通項として

 (1)ビジネスモデルは「価値を生み出す」

 (2)ビジネスモデルは様々な要素・関係性を「総合的につなぎ合わせたもの」

 という2点があげられる。

□一方、伊丹(2009)は、

 「ビジネスモデルとは、製品やサービスを顧客に届けるまでの仕事の仕組みを指す

 『ビジネスシステム』と、収益を上がるためのビジネスの仕掛けを表す『収益モデル』

  が組み合わさったもの」と捉えている。


□経営史研究では、その大きな目的の一つとしてビジネス・システムの変化の解明が取り組まれてきた(川邉、2015;宮田、2021)。

ビジネス・システムという概念は、Thomas C. Cochran (1957)において用いられ、その後Arthur Cole (1964)らによって発展した。

そこでは、明確な定義づけはなされていないが、すべての産業部門から形成される一国全体の制度的構造であることが示唆されていた(酒井、1967)。

その後、ビジネス・システムは、より多義的に捉えられ、経営史研究では、国全体の企業システムに加え、産業レベル、特定企業レベル、各事業所レベルにおけるビジネス・システムについての検討や考察がなされ、経営学研究では、より企業レベルの分析が中心となっていった(酒井、1967;大東ほか、2007;加護野忠男ほか、2016)。

※なお、経営学研究者は「ビジネスシステム」と表記する傾向にある一方で、経営史研究者は「ビジネス・システム」と表記する気がする。


□ビジネス・システムという用語の多義性から、同概念は、各ミクロな研究を包括するキーワード、あるいはキャッチフレーズとして扱うことが一つ考えらえる。

□あるいは、そこから一歩進めて、「ビジネスのメタシステムの進化」としてのビジネス・システム研究もありうる。

これは、単に経営史研究だけにとどまらず、経営理論では説明できないビジネス(入山、2019)に向けた理論構築への貢献の可能性があるかもしれない。

「ビジネス」の理論としての経営史研究は、近年注目が集まっている歴史的組織研究(historical organization studies)あるいは新しい経営史(new business history)という主に経営理論に向けた研究とは、また違ったアプローチが必要と考えられる。

しかしながら、経営史研究は、歴史研究と経営研究の間にあり、事実発見の重要性がまず第一である。

それに基づいて、「ビジネス」の歴史像の構築に向かうのか、あるいは「ビジネス」の理論貢献に向かうのかは、各経営史研究者に委ねられるだろう。

いずれにしても、A.D.チャンドラーの研究などから一つの到達点に達した経営史研究は、次の学術的発展に向かう時期におり、面白い可能性を秘めているのである。


参考文献

伊丹敬之(2009)「ビジネスモデルの軸は収益モデルではない」ITmedia エグゼクティブ。

入山章栄(2019)『世界標準の経営理論』ダイヤモンド社。

加護野忠男・山田幸三(2016)『日本のビジネスシステム』有斐閣。 

川邉信雄(2015)「統一論題について」『経営史学』第49巻第4号,66-72頁。

酒井正三郎(1967)「ビジネス・システムと経済発展」『経営史学』第2巻第1号,1-12頁。

大東英祐ほか(2007)『ビジネス・システムの進化』有斐閣。

西野和美(2015)『自走するビジネスモデル』日本経済新聞社。

宮田憲一(2021)「『経営史の風景』の広がりを考える (全国大会報告)」『経営史学』第56巻第1号,54-56頁。

歴史的組織研究と歴史的ビジネス研究の間(工事中)

[update history:  Jan. 9, 2022; Jan 10, 2022]

グラース

コクラン、コール、チャンドラー





参考文献

Donaldson, Thomas and James P. Walsh. (2015) Toward a Theory of Business. Research in Organizational Behavior 35, 181-207.

入山章栄(2019)『世界標準の経営理論』ダイヤモンド社。

The Editors. (2017) Debating Methodology in Business History. Business History Review 91:03, 443-455. 

山内雄気・井澤龍・久野愛・宮田憲一(2021)「全国大会報告 経営史は社会をどう描くのか」『経営史学』第56巻1号、50-56頁。

吉原英樹(1968)「経営史学と革新の行動科学的理論」『経営史学』第3巻第3号 、56-82頁。

Behlül Üsdiken and Matthias Kipping  (2021) History in Management and Organization Studies: From Margin to Mainstream, Routledge.

歴史的組織研究の「歴史」とは何なのか(工事中/Under construction

[update history:  June. 1, 2022]

酒井・井澤(2022)によれば、Coraiola et al. (2021)は、海外での研究のメインストリームではあるが、5分類のうちの1つであり、もともとHOSは、歴史的研究をより広い意味で捉えていたことが指摘されている。(続きは後で)


参考文献

井澤龍(2022)「イギリスのビジネス・アーカイブズと企業史料: 何を残したのか、残されているのか」Research Paper Series(東京都立大学経済経営学部・経営学研究科) No. 35。

酒井健・井澤龍(2022)「経営・組織論研究における歴史的転回:その軌跡と針路」『組織科学』第55巻第4号、4-14頁。



[update history:  Jan. 24, 2022]

HOSの「歴史history」とは、

 (1)"the tale told by a foreign explorer," あるいは "the product of purposeful research and writing that take place in the present and looks back at the past"とされる。

 (2)そしてそれは、"discontinuity and distance between the actors of the past and the authors of history"と考えられる。

 (3)さらに、"an identifiable author whose authority about the past attached to the sources used to tell the tale"という特徴をもつ

HOSの「集合記憶(collective memory)」とは、

 (1)"the recollection of shared experiences," あるいは、"narratives that are passed down (discarded) from generation to generation"とされる。

 (2)そしてそれは、その"narratives"を通じて"what is remembered (forgotten)"が広まる。

 (3)"emergent and has no clear author"であり、"provided by a specific mnemonic community's traditions and beliefs"という特徴を持つ

つまり、両者は、それぞれ違いがあるわけだが、"過去(past)"に関する"alternative perspectives"であり、相互補完的するときもあれば、矛盾するときもあると位置づけられる。そして、現在のHOSでは、両者の明確な区別をせずに議論さているため、これからは、両者の違いをより意識しする必要があると主張している。




※表は、Coraiola et al. (2021)での用語をもとに、HOSの領域について仮で考えてみたもの。

参考文献

Diego Coraiola, Amon Barros, Mairi Maclean, William M. Foster (2021) History, memory, and the past in management and organization studies. Revista de Administração de Empresas 61:1, 1-9: here.

Pierre Nora  (1989) Between memory and history: Les lieux de Memoire. Representations 26, 7-24: here.

Eviatar Zerubavel (1996) Social memories: Steps to a sociology of the past. Qualitative Sociology 19:3, 283-299: here

歴史的組織研究のいうレトリカル・ヒストリーとは何か(工事中)

[update history:  June. 1, 2022]



参考文献

井澤龍(2022)「イギリスのビジネス・アーカイブズと企業史料: 何を残したのか、残されているのか」Research Paper Series(東京都立大学経済経営学部・経営学研究科) No. 35。

酒井健・井澤龍(2022)「経営・組織論研究における歴史的転回:その軌跡と針路」『組織科学』第55巻第4号、4-14頁


[update history:  Jan. 25, 2022]




参考文献

氏川雅典2005)「R・H・ブラウンのレトリック論-その『詩学Poetics』と『政治Politics』」『ソシオロゴス第29号35-51頁。

氏川雅典(2006)「ペレルマンのレトリック論-『普遍的聴衆』論の再検討」『ソシオロゴス』第30号 、50-70頁。

林原玲洋(2006)「論証役割とメタファー:レトリック分析の社会学的可能性の社会学的可能性に関する一考察 」『先端社会研究 』第4号 、475-493頁。

林原玲洋(2011)レトリックを使うとはいかなることか:媒介的価値の遡及的な分節化 」『人文学報 』第437号 、95-126頁。

松尾健治(2019a)「レトリカル・ヒストリーとその失敗のメカニズム:見過ごされてきた論点と今後に向けた方法論的考察」『經營學論集』第89集第45号、1-8頁。

松尾健治(2019b)「レトリカル・ヒストリーによる意図せざる結果についての歴史的事例研究」『碩学舎ビジネス・ジャーナル』第89集、1-17頁。

経営戦略論における歴史の扱い方(工事中/Under construction)

[update history:  June 1, 2022]

[”history to theory” direction]

  ①長期間のデータセットによる考察

  ②反事実的な考察

  ③what-if的考察

  ④複雑な戦略現象の解明に向けた深く包括的な歴史事例の考察

[”history in theory” direction]

  ⑤非制御変数としての歴史的文脈の影響の考察

  ⑥組織変化やイノベーション等に対する過去の影響の考察

  ⑦戦略形成プロセスに対する各時代の影響の考察

(続きは後で)


参考文献

Argyres, N. S., De Massis, A., Foss, N. J., Frattini, F., Jones, G. & Silverman, B. S. (2020). History-informed strategy research: The promise of history and historical research methods in advancing strategy scholarship. Strategic Management Journal, 41(3), 343-368. here

宮田憲一(2022)「企業ドメインの歴史性:ウェスチングハウス社の企業転換に関する事例研究 」『組織科学』第55巻第4号、27-38頁。


[update history:  Feb 14, 2022]

経営戦略論において「歴史」はどのように扱われてきたのだろうか。この点について、以下のようにSuddaby et al (2020)は分かりやすく整理している。


(1)「歴史」はマネジメントの範囲外である:外因的要素としての歴史

(a)明示的な「歴史の役割」を示す研究:e.g. strategy and structure (Chandler, 1962), path dependence (Arthur, 1994), and technological lock-in (David, 1985). 

(b)暗示的な「歴史の役割」を示す研究:e.g. geographic clusters (Porter, 1998), the resource-based view (Barney)


)「歴史」はマネジメントの範囲内である因的要素としての歴史


HOSが対象とする歴史的「戦略」研究は(2)になるといえるが、(1)もまた引き続き重要な研究である。(1)と(2)の一つの相違は、(1)が歴史を組織に影響を与える要因のone of themとしてみる一方で、(2)が歴史を組織そのものを構成する要素としてみるというものかもしれない(この点はまだ不明)。


参考文献

Roy Suddaby, Diego Coraiola, Charles Harvey, and William Foster (2020) History and the micro-foundations of dynamic capabilities. Strategic Management Journal 41: 3, 530-556: here

歴史と経営史:(工事中/Under construction

[update history:  Jan. 11, 2022]


企業市場:(工事中/Under construction

[update history:  Mar. 4, 2022]

マクミランの「市場」:市場経済の主な利点は、「悪人たちのもたらしうる害が最小となるシステム(F. A.ハイエクを引用)」

➡企業:企業組織の主な利点は、人々の利潤動機のもたらしうる便益が最大となるシステム

マクミランの「見えざる手」:分散した情報を活用し、経済をコーディネートし、取引利益を創出することで、効果的に作用する

➡見える手:集中した知識を活用し、市場をコーディネートし、生産利益を創出することで、効果的に作用する

マクミランの「市場システム」:民主主義のようなもの

➡企業システム:専制主義のようなもの


以上は、あくまで思考の練習。企業にも市場のような特徴が含まれている場合もある気もするし、それこそカリカチュアかもしれない(例えば、知識自体にも形式知と暗黙知が両方内在しているように、企業にも両方の特徴が内在しているかもしれない)。ただ、こうした対比した見方は、議論を単純化することで、思考の整理の開始には便利。


参考文献

ジョン・マクミラン(2007)『市場を創る:バザールからネット取引まで』NTT出版。

過去をどうつなげるか(工事中/Under construction

[update history:  Dec. 24, 2021]

(1)比較の視点

   ある類似した現在と過去の状況のアナロジーを考える(時代比較)

   例えば、清水(2021)

(2)進化の視点

   現在の状況に対する経路依存性、あるいは過去から現在の連続を考える(連続と断絶)

   例えば、橘川(2004)

(3)実験の視点

   現在の「big issue(大きな課題)」や「big topic(大きな主題)」の考察に向けた実験として考える(自然実験)

    例えば、清水(2016)




参考文献

橘川武郎(2004)『日本電力業発展のダイナミズム』名古屋大学出版会

清水洋(2016)『ジェネラル・パーパス・テクノロジーのイノベーション』有斐閣。

清水剛(2021)『感染症と経営』中央経済社。 

歴史研究を進めるアプローチ(工事中/Under construction

[update history:  Aug. 22, 2024]

(1)アクター(人物)の拡大

研究対象とする「それ」が、既存研究では一部の人たちに偏って描かれている場合、他のアクターはいないのか?という疑問から研究を進める。

これは「社会史、文化史、ミクロで日常的な歴史の視点」を取り入れた研究アプローチである。

経営史研究においては、カリスマ創業者や経営者(e.g.スティーブ・ジョブズ、ジャック・ウェルチ)など特定の人物の視点から記述される場合があるが、他の従業員はどのように経営活動に関わっていたのかといった視点を考えることで、そうしたカリスマ的人物を相対化させ、ヒーロー的歴史叙述から脱した、経営や企業の歴史像を構築できる可能性がある。

(2)スケール(場所)の拡大

研究対象とする「それ」が、既存研究では一部地域の状況に偏って描かれている場合、他の地域は関係ないのか?という疑問から研究を進める。

これは「大西洋史、帝国史、グローバル・ヒストリー」といった歴史学の新たな方法を取り入れた研究アプローチである。

経営史研究においては、例えばその国の国内の状況を前提とした視点から記述される場合があるが、その前提条件に影響を与えている国際関係などインターナショナルやグローバルな視点、あるいは同時期の中心ではない国内地域の関りなどインターローカルな視点を考えることで、そうした特定の中心地にもとづく歴史叙述から脱した、経営や企業の歴史像を構築できる可能性がある。

(3)タイムスパン(時間軸)の拡大

研究対象とする「それ」が、既存研究では特定の時期の終わりや始まりに偏って描かれている場合、他の時期との関係ないのか?という疑問から研究を進める。

これは連続と断絶といった経済史・経営史研究でみられる研究アプローチといえそうである。

経営史研究においては、たとえばある制度の始まりや終わりを特定のイベント(戦争、法律制定etc)を前提とした視点から記述される場合があるが、より長い時間軸の視点で考えることで、その特定のイベントは過渡期に過ぎないといったかたちで相対化させ、そうした特定のイベントの過度な評価にもとづく歴史叙述から脱した、経営や企業の歴史像を構築できる可能性がある


参考文献

上村剛(2024)『アメリカ革命』中公新書

経営史ってどういう学問なのか?工事中/Under construction

stay tuned


企業の歴史

経営管理(マネジメント)の歴史, history of management

下からの経済の歴史

ビジネスの歴史

企業と社会の歴史、history to / in public 


新たな歴史像構築としての経営史研究、経済史、文化史、社会史などとの融合

歴史分析としての経営史研究

歴史的組織研究(HOS):経営理論に向けた経営史研究、history to / in theory

企業の内部分析を踏まえた歴史研究


応用経営史

歴史からの教訓